岩手・木質バイオマス研究会は、木質バイオマス利用の普及を通じて、岩手の風土、地域性に根差した循環型社会の形成に資することを目的に活動しています。

設立:2000年7月5日

 【事務所】

住所:〒020-0861 盛岡市仙北1-14-20

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(↑差出人名が事務局長職場の「細田電機管理所」になります。)  

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◆2022年 代表新年のご挨拶 「脱炭素社会」ではなく「持続可能な社会」を目指そう。

この記事は林業新報に掲載されたものです。転載をご許可くださった林業新報社に御礼申し上げます。

 

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は、当研究会の活動にご支援ご助力を賜りましたこと厚くお礼申し上げます。

 昨年も、新型コロナウィルスの影響を少なからず受け、一昨年に引き続き、当研究会の活動も細々としたものになってしまいました。そうした中でも、2020年10月の「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」の宣言以降の動きが活発化しており、再生可能エネルギーを巡る状況は今後大きく変化しそうです。具体的には、翌2020年12月に開催された第6回成長戦略会議において、経済産業省を中心に関係省庁も連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が報告され、2021年6月にはより具体的な内容が発表されたことにより、森林・林業・山村との関わりも具体的にイメージされるものとなっています。

 私たちはこの「宣言」を、期待と不安をもって注視しています。当研究会を設立した2000年に、すでに「脱化石燃料」を宣言していたスウェーデンヴェクショー市をはじめとし、東日本大震災以降、欧州各国あるいは様々な団体が、再生可能エネルギー100%のシナリオを描き、実行に移してきました。それに対して日本は、過酷事故の当事者でありながら脱原発を宣言できず、再生可能エネルギーの導入目標も極めて消極的と言わざるを得ませんでした。その証拠に、気候変動枠組み条約締約国会議のたびに、「化石賞」を受賞するのが恒例といった、不名誉な指定席の常連となっていたのです。

 こうした経緯からは、「脱炭素社会」宣言は、既に周回遅れの宣言と感じますが、ともあれ、再生可能エネルギーを軸とした社会への本格的移行のスタートラインに立ったという点では歓迎できるものと思います。その一方で、「成長戦略」として位置づけられており、大胆な投資やイノベーションを基軸とした内容に彩られていることにいささかの違和感と不安を感じています。というのも、これまでの再生可能エネルギー政策は、少なくとも森林・林業・山村の抱える問題を解消したわけではなく、むしろ新たな問題を引き起こしさえしているからです。

 例えば、1997年の京都議定書の採択によってスタートした地球温暖化防止対策の成果を振り返ってみると、約束期間の5ヵ年平均の排出量が基準年に対し1.4%増加したのに対し、森林吸収源で3.9%、京都メカニズムで5.9%が削減され、合計で目標を上回る8.4%が削減されたとしています。ご存知のように、林業は、「地球温暖化防止森林吸収源10ヶ年対策」に基づき、吸収源に認められるための追加的な間伐の実行に貢献しました。要するに、化石燃料を大量消費する経済・産業構造の改革には手を付けずに、産出額ではわずか2,600億円ほどに過ぎない林業(特用林産物を除く)が目標達成に最も貢献した産業となったわけです。日本は、京都議定書を数字の辻褄合わせで終わらせてしまい、再生可能エネルギーへの本格的な取り組みを大幅に遅らせてしまったのです。

 東日本大震災を経て、2012年に導入された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって、ようやく再生可能エネルギーの取り組みが本格化します。しかし、これまで何度か指摘してきたように、いくつかの新たな問題を引き起こしてしまいました。

 1点目は、熱利用を伴わない木質バイオマス発電所が全国に多数建設され稼働していることです。7割もの熱エネルギーを捨てながら発電をおこなう発電所が、脱炭素あるいは持続可能なエネルギーと言えるのかということです。さらには、輸入燃料を前提とした大型の木質バイオマス発電所の建設が相次いでいるなど、ライフサイクルを度外視して生産された電力が「再生可能エネルギー」として流通する事態を引き起こしています。

 そして、昨年初めに欧州委員会が発表したレポートが大きな波紋を呼んでいます。そのレポートは、「森林バイオマスは化石燃料よりもCO2を多く発生させ、さらに生物多様性と環境破壊のリスクを長期に増大する」と結論づけるものでした。このレポートによってすぐに木質バイオマス利用が否定されるものではありませんが、再生可能エネルギーの開発には、生物多様性や人権問題を含む持続可能性が当然のように求められるようになる、ということを示唆するものだと言えるでしょう。

 2点目は、メガソーラーによる新たな森林開発です。1ha以上の森林の開発には、林地開発許可制度に基づき、都道府県知事の許可を必要としますが、2011年度における林地開発許可の件数は238件、面積で1,458haでした。しかし、2020年度では437件、4,651haへと急増しており、このうち太陽光発電施設によるものが、236件、3,217haと大きな割合を占めるようになりました。林地開発の申請は、保安林に指定されているとか、災害等のおそれがあるといったことがない限り許可されることから、多くの場合開発を制限することが出来ません。こうした状況に対応して、市町村を中心に太陽光発電事業の規制に関する条例を設ける動きが急増しています。2021年7月現在では、都道府県4条例を含む156条例が施行されており、多くの自治体が危機感を抱く状況となっています。

 こうしたメガソーラーによる森林開発が急増した背景には、超低金利政策による金余りの状況下で、FITに関連する電源開発に投資が向かっていることがあげられます。こうした経験は初めてではなく、バブル経済期に施行されたリゾート法が、山村におけるリゾート開発を助長した構造とよく似ています。

 もう1つの背景には、山村の危機があります。林業地代が極限まで低下し林業経営が成り立たないことに加え、人口減少と高齢化により、経営からの撤退だけでなく、相続を諦め森林を処分しようとする地域住民が増えていることがあげられます。山村の危機は一層深まっていると言っていいでしょう。

 このように、これまでの経験からも、「脱炭素社会の実現」が私たちを取り巻く問題を解決してくれるわけではないと考えてよいでしょう。私たちは、今後の取り組みが農山村の豊かさに結び付くものなのかどうか、持続可能な社会に向かうものなのかどうか、注意深く見守るとともに、積極的に働きかけていく必要があると考えています。

 特に、再生可能エネルギーへの追い風が強く吹いているにもかかわらず、小規模分散的な木質バイオマスの熱利用がいっこうに普及せず、むしろ困難が増えている状況に対し、微力ながらその改善に貢献できるよう、当研究会も活動を続けていきたいと思っております。引き続きご支援ご助力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

岩手・木質バイオマス研究会代表 伊藤幸男

◆いわて木質バイオマスエネルギー利用展開指針(第2期)が策定されました。

岩手県より、木質バイオマスエネルギー利用の積極的な促進に向けて、これまでの取組期間における成果や課題を整理するとともに、社会情勢の変化を踏まえながら、「いわて県民計画(2019~2018)」に掲げる推進方策等に対応した展開方向を示すものとして標記指針が策定された旨通知がありました。

「いわて木質バイオマスエネルギー利用展開指針(第2期)」

 内容は上記のページからPDFファイルをダウンロードしてご覧になることができます。

◆ 燃料用木質チップの生産・流通に関する提言

1. 目的

 この提言は、熱利用を中心とした木質バイオマスエネルギーの主軸となるチップボイラーをさらに普及させるために、水分率等の品質に応じた燃料チップの生産及びその円滑な流通を促すことを目的としています。

 

2. 背景及び課題※

①岩手県はいち早くチップボイラーの導入が進みましたが、東日本大震災後導入が加速し、現在49台に至っています。

②その結果、熱利用に供される燃料チップは2010年の1,592BDtから2015年の8,526BDtへと5.4倍へと急増しました。

③チップボイラーの民間施設への導入が増加したり、チップ供給事業者も森林組合以外が増加するなど、その担い手が多様化しました。

④その結果、ボイラーと燃料チップのミスマッチが起き、導入施設でトラブルが起きたり、チップ供給者の負担が増したりするなどの事例が確認されました。

⑤燃料としてのチップは、水分率が低いこと、すなわち発熱量が大きいほど高い価格で取引されるべきですが、ほとんどの事例で発熱量の大小を評価し価格に反映させることなく、任意の価格で取引されていました。また、価格の基準となる根拠を理解している事業者はほとんどいませんでした。

※遠藤元治氏(本会会員)の研究成果より。

 

3. 提言

【提言1】

燃料チップの品質(=水分率=発熱量)を価格に反映させた取り引きを促すよう、需給双方への情報提供と合意形成を支援する。

 水分率の低い(M45以下の)燃料チップを供給するためには、何らかの乾燥工程が必要となりコストが掛かり増しになることから、発熱量をベースとした、需給双方が納得できる取り引きに転換していくことが求められます。また同時に、水分率を管理できる燃料チップの供給業者を育成していくことが求められます。

 

【提言2】

発熱量をベースとした取り引きのためには、精度の高い簡易な水分計が不可欠であるため、そのような水分計の導入を促進する。

 これまでも、簡易な方法で水分率を推計してきましたが、樹種が異なったり混じったりすると対応しにくいという問題がありました。水分率を把握することで、価格形成だけでなく、需給双方で水分率の季節変動へ対応できるようになるなど、様々な利点が生まれます。また、地域でどのような品質の燃料チップが供給可能か把握することは、チップボイラーを導入する際の重要な前提条件となるため、チップの水分率の把握は最も重要な事項です。

 

【提言3】

 チップボイラーを導入する際は、その構想・設計段階から、燃料チップ供給を担う候補者と十分な意見交換をおこなう機会を持つよう促す。

 地域で燃料チップを供給できる者は実際には多くなく、どのような品質のチップをどれぐらい供給できるかは、チップボイラーを導入する前にある程度把握することが可能です。しかしながら、チップボイラーの導入が決まったあとで供給業者の選定が行われることが多く、望まれる品質の燃料チップが確保できない、あるいは供給業者に負担を強いるということが起きています。この点からも、【提言1】及び【提言2】に基づき、事前の調整が重要となります。

 

【提言4】

 チップボイラーの運用、燃料供給に関わる事業者の横断的な情報交換の場を設ける。

 燃料チップは地産地消的に地域内で供給されることがほとんどで、一対一の関係で取り引きされることがほとんどです。そのため、岩手県でこれほどの導入事例があっても、どのような問題が起きているのか、どのような工夫がこらされているかなど、情報を共有する機会がありません。これまでの経験が生かされるよう、事業者の横断的な情報交換を行ったり、勉強会を行う場が必要です。

2017年9月

 

この提言について会員からは次のような意見が寄せられています。

○気仙沼の「気仙沼地域エネルギー」が行っているバイオマス発電でも チップの水分含有率の想定違いによる問題が過去に生じた。

プラントはドイツ製で、あちらではチップ材はカラマツ系で、こちらのスギ系で運転したところ自然乾燥が困難となる冬場に燃料不足となった。乾燥設備の追加を行い現状は良好となっている。

やはり、今後検討される方には最初から必要な情報だと思う。

 

○かつてスギの材を乾燥するのに苦労した経験がある。今年はチップを乾燥して社会に提供する元年になる。このことを岩手から日本中に発信することが大切だと感じた。乾燥したチップを作るためのインセンティブとして何ができるかの戦略を考えることが必要だ。

 

○天然乾燥のためにヤードごとにそれぞれノウハウを持っている。それらの蓄積は岩手の財産だと思う。燃料用チップは相対取引であるが、お互いにバイオマスエネルギーの可能性に関心を持ちサスティナブルな価値を見出している所が、石油のような価格だけで取引しているのと違う良さだと思う。

 

○乾燥チップについてデータがあれば付加価値が付く。あまり細か過ぎてはいけない。石油との比較で相手に納得感があれば評価される。

 

○乾燥チップが供給できるようになると、小型で安いボイラーが導入しやすくなり、普及の幅が広がる。

 

○水分管理をきちんとしたチップが供給できれば納入先が多角化し供給を増やすことができる。製紙用チップが今後伸びることは考えにくく、チップ業者が年間を通じたなりわいをつくっていく必要がある。

◆2011年に行った政策提言(要旨)

◆◆◆基本方針◆◆◆
  ・再生可能エネルギーに対する自治体の明確な姿勢が必要。
  ・地域が自立化していくことを重視し、地域住民の主体的な選択と地域資本の育成を促すことが重要。
  ・小規模分散型の熱利用をまず重視する。その経験の積み重ねの先に大規模な発電がある。
  ・地域ごとの特徴に配慮した、技術水準と資本規模を慎重に見極める必要がある。

  地域住民が管理・運用できる、安定したローテクが重要。
  ・木質バイオマスの根幹である、林業が活性化し安定していくことが重要。

  他との競争ではなく、新たな価値を創造し自ら価値実現できる範囲を少しずつ広げていくこと。


◆◆◆主な提言◆◆◆
 ・ 実践過程において、企業同士や消費者、地域住民の情報交換の場をつくる。
  ・補助金に依存しない、緩やかな規制や優遇措置等の施策を導入。
 ・ 木質バイオマス利用が森林経営の持続性に寄与するための制度を確立する。
 ・ 復興に際しては、再生可能エネルギーへのモデル地域をつくる。
  ・木質バイオマス利用は半径30キロ程度を目安とした範囲内で生産と利用の仕組みを構築する。
  ・エネルギー効率の高い住宅建築の推進と小規模分散型の熱供給システムの推進。
  ・地域資本を育成する観点から、民間ファンド、地元金融機関の協力関係を促したり、自然エネルギーへの投資を円滑にするための枠組みの構築が必要。
  ・木質バイオマスを中心とした熱利用、熱政策を重点的に進める。発電は当面、風力や太陽光で。
  ・ペレットの県内自給率を上げるための対策が必要。

詳しい内容は「資料」の中の「政策提言」のページからダウンロードしてご覧ください。

 

なお、自然エネルギー財団は2016年11月25日に下記の提言を発表しています。

「 木質系バイオマス発電に関するFIT制度見直しの提言  

  ~持続可能なバイオエネルギー利用実現のために必要な軌道修正を~」

こちらもご参照ください。(↑クリックするとリンクしたページが開きます。)